気になった曲やトピック、「今週の1枚」などをフリーに紹介するウィークリー・レポート。(ほぼ)毎週(ほぼ)日曜日に更新予定。今週は Youth Lagoon、Clark、Avalon Emerson、boygenius、Lankumのニュー・アルバムからの先行曲、The Oriellesのライブ・アルバムについて書きました。
Youth Lagoon – Idaho Alien
2016年に活動停止を宣言していたユース・ラグーンが復活してリリースするニュー・アルバムからの最初の先行曲。温もりのある質感のピアノとドラム、ベースの上に特徴的なトレヴァー・パワーズのボーカルが乗る静かで幽玄な楽曲。薬の影響で一時期は声すら出せなくなったというトレヴァーの歌が胸に迫る切実さを感じさせて本当に素晴らしい。一曲だけでアルバムの方向性はまだ見えないけど、「カントリーの香りが漂う突然変異のアメリカーナ」とのことで、新生ユース・ラグーンがどんな姿になっているか非常に楽しみです。
Clark – Clutch Pearlers
UKのエレクトロニック・ミュージシャン、クラークの5/26リリース予定のニュー・アルバムからの2曲目の先行曲。アヴァンでトライバルなIDMトラックに中性的なクラークのボーカルが乗る浮遊感のある一曲でメチャクチャ良い。ボーカルがアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーを務めたトム・ヨークを思わせるところがあるんですが、歌ってるのトムじゃないですよね?何にせよ、ボーカルが一つの楽器のようにトラックと絶妙に融合している感じが素晴らしい。楽しみなアルバムです。
Avalon Emerson – Hot Evening
NYのDJ/プロデューサーのアヴァロン・エマーソンがアヴァロン・エマーソン・アンド・ザ・チャーム名義でリリースするデビュー・アルバムからの先行曲。凄く良い感じ。DJやプロデューサーとして活動してきた彼女が初めて自身の感情と声に焦点を当てたボーカルアルバムとのことで、軽やかで煌めき感のあるダンストラックに癖のないボーカルの乗るスムースで気持ちの良い一曲。アルバム & The Charm が4/27にリリース予定です。
boygenius – Not Strong Enough
ボーイジーニアスのデビュー・アルバムからの4曲目の先行曲。フィービー・ブリジャーズ、ジュリアン・ベイカー、ルーシー・ダッカスの3人がリードボーカルを取る曲で間違いなくアルバムのなかでも重要な位置を占める曲であることが一聴してわかるほど素晴らしい。特にルーシーのパートの”Alaways an angel, never a god”のリフレインから最後のサビに雪崩れ込む展開が最高すぎる。スナップムービー風のMVも最高なので未見の方は是非チェックしてみてください。
Lankum – The New York Trader
アイルランドのエクスペリメンタル/トラッド・フォーク・バンド、ランカムのニュー・アルバムからの2曲目の先行曲。軽さのあるトラッド・フォーク風の前半から音圧の増す後半にかけて、8分近い曲の中で1フレーズの同じメロディーが繰り返し歌われる楽曲で、ほぼアコースティックの楽器編成であるにも関わらず、思わず大音量で聴きたくなるようなトランス感が凄まじい。先に公開されていた”God Dig My Grave“と合わせて凄いアルバムが来そうな気配をヒシヒシと感じます。
The Orielles – Live At Stoller Hall
UK/マンチェスターのインディー・ロック・トリオ、ジ・オリエルズのライブアルバム。ザ・ノーザン・セッション・コレクティブのフルオーケストラをバックにマンチェスターのThe Stoller Hallで行われた特別編成のライブで録音された全10曲を収録した作品。
各所で絶賛されていた昨年リリースのアルバム Tableau は、自分にとっては「凄いのはわかるけど、腹落ちしない」アルバムで、60分超えという長さもあってなかなか繰り返し聴くことのなかった作品だったのだが、今回リリースされたこのライブ盤を聴いて、その「腹落ちしない」部分がストンと入ってきたというか、端的に聴いてて気持ちよかった。ライブならではのダイナミズムがあって、端的に言ってノれる。構築的な部分と即興的な部分が組み合わさって出来あがった奇妙な曲の魅力がダイレクトに響いてくるし、派手さを加えるためにオーケストラを使っているのではなく、あくまでも音楽的な手段として効果的にオーケストラを使っており、音楽的な完成度も非常に高いように思える。10曲に凝縮したコンパクトな構成も聴きやすさがあるし、Tabelau 以前のアルバムの曲 (“Bobbi’s Second World”、”Sunflower Seeds”) もいいアクセントになっている。Tablau ではスペーシーで夜の雰囲気が強調されていたが、以前のアルバムで聴くことのできるサンシャイン・ポップ的な魅力も感じられるのもとてもよかった。
曲に対する新たな気づきや視点を与えてくれるのがライブやライブ盤の良いところで、そう言った意味でもこのライブ盤は素晴らしいライブアルバムだし、リリースしてくれてよかったなと思う。またじっくり Tableau を聴いてみたくなった。
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