気になった曲やトピック、「今週の1枚」などをフリーに紹介するウィークリー・レポート。(ほぼ)毎週(ほぼ)日曜日に更新予定。

今週はYouth Lagoon、Moreish Idols、Indigo De Souzaの新曲、Black Country, New Roadのライブ、Jana Hornのニュー・アルバムについて書きました。

Youth Lagoon – Prizefighter

復活したユース・ラグーンの6/9リリース予定のニュー・アルバムから2曲目の先行曲。”Idaho Aliens“に引き続き凄く良い。話すことができなくなるほど薬で声帯と喉を痛めたというトレヴァー・パワーズだが、そうした背景を知らなくても彼の歌声が一瞬で世界を変えてしまうような特別なものであることが聴けば立ちどころにわかってしまう。「あっち側の世界」を知ってる人間の歌声。その裏に隠された心に染み入るような普遍的なソングライティング、シンプルでありながら生と死のあわいを漂うような奇妙なアレンジも何もかもが素晴らしい。

Moreish Idols – Chum

Speedy Wundergroundからロンドンのモレイッシュ・アイトルズの新曲。一連のシングルリリースは4/28にリリースされるニューEPのものだったようで今回が4曲中3曲目となる先行曲。ダイナソーJr.の疾走感にサイケデリアをプラスしたような一曲で、閃光を放つギターと絡みつくサックス、色気のあるボーカルが無茶苦茶カッコいい。これまで出た3曲全部が素晴らしく、今回はEPだけどこのクオリティーでアルバムを出せたらブレイク間違いなしと感じさせるほどの勢いがある。12インチ欲しい!

Indigo De Souza – You Can Be Mean

インディゴ・デ・ソウザの4/28リリース予定のニュー・アルバムからの3曲目の先行曲。最初の先行曲”Younger & Dumber”が壮大なバラードで次の”Smog”が軽快で甘酸っぱいインディー・エレクトロ、今回は青春感溢れるオルタナ・ギターポップ。音楽性の振れ幅は大きいけど、それぞれの楽曲が出色の出来でMVを観ててもはち切れんばかりのエネルギーが溢れていて最高。いいアルバムが来そうです。

Black Country, New Road (@渋谷O-EAST, 4/6)

昨年のフジロック以来のブラック・カントリー・ニュー・ロードのライブ。フジロックの時も感動的なライブだったけど、今回は”Live at Bush Hall”を聴き込んだ後だったので、フジロックの時とはまた別の感動があり、存分に堪能できた。

“Live at Bush Hall”の曲順に新曲が差し込まれる構成で、1時間15分ほど。シアトリカルという意味ではなく、ナチュラルに劇を見ているようなライブで、ボン・ジョヴィのSEに合わせて駆け足でビールを零しながらステージに登場してくる「らしさ」溢れるオープニングから最後まで、各人に均等に見せ場がある青春群像劇。それぞれの出す音が互いに潰し合わずに響くアンサンブルも完成度が高く、どこかのインタビューで読んだ「民主的なバンド」ということを思い出したりした。”Up Song”で始まり”Dancers”でクライマックスを迎え、最後にもう一度”Up Song”に繋がって円環を閉じる構成も含め、どこからどこまでも物語的なバンドだなと思った。

とりとめないが、”Ants From Up There”をリリースしてから僅か1年ちょっとでここまで到達したバンドの姿にとにかく感動し、胸がいっぱいになった。素晴らしいライブでした。

Jana Horn – The Window Is the Dream

Jana Horn – The Window Is the Dream (No Quarter)

今週の1枚。

今週も気になる新譜が数多くリリースされて、楽しみにしていたはずが「あれも聴かなきゃこれも聴かなきゃ」となんとなく辟易した気持ちになってしまっている人に「まあまあ焦らないで、これなかなかいいですよ、よかったら」とひっそりとオススメするような心持ちで虚空に向かって投稿を続ける当コーナー、今週はオースティンのシンガーソングライター、ヤナ・ホーンのニュー・アルバム。

音楽を聴いて「アガりたい」ときもあれば「チルしたい」ときもあり、はたまた「エモい」気持ちになりたいときもあるけれども、生活していれば大半は「アゲ」「チル」「エモ」ではなくただただボーッとしながら(少なくともわたしは)過ごしているわけだが、ヤナ・ホーンのこのアルバムはそんな普段の何気ない時間にそっと寄り添ってくれる。もちろんこのアルバムがボーッとしたアルバムだと言いたいのではない。むしろ繊細かつ丁寧に作られた作品で、各楽器の息遣いが聴こえるような親密さを感じさせる作品なのだが、不思議と緊張感はない。老いた夫婦が食卓で会話ともつかない話をボソボソとしているような空気感。大学で文学や詩を学ぶヤナが一年間の休学期間中に気のおける仲間と納屋を改造したスタジオで制作したという過程を反映してか、どことなくリラックスした空気が漂っており、適度に夢幻的な感覚が何も考えていない自分の心にずっと染み込んできて寄り添ってくれる。

急に飛躍した言い方をしてしまえば、自分の存在を示すために「いいね」と言うのではなく、「いいな」と思ったことに「いいね」と言うのが本来の在り方なのだと、そんなことを思い出させてくれるアルバムである。

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