気になった曲やトピック、「今週の1枚」などをフリーに紹介するウィークリー・レポート。(ほぼ)毎週(ほぼ)日曜日に更新予定。

今週はRahill、Viji、Georgiaの新曲、Kris Ulrichのニュー・アルバムについて書きました。

Rahill – Fable (feat. Beck)

サイケデリック・バンド Habibiのメンバーとしても知られるイラン系アメリカ人シンガーソングライター、ラヒルの5月リリースのデビュー・アルバムからの2曲目の先行曲。ベックがフィーチャリングで参加。どことなく”Guero”あたりのベックっぽさも感じるアップテンポなビート・ポップスで、サイケデリックな上ものアレンジ生み出す絶妙な浮遊感が心地よく中毒性がある。先に公開されていたオリエンタルなトリップポップといった趣の ‘I Smile for E’ も素晴らしく、アルバムの期待値が爆上がりしております。

Viji – Down

Dirty HitからシングルやEPをリリースしてきたロンドンのシンガーソングライター、Viji (読み方はそのまま「ヴィジ」でいいのでしょうか?) が、ダン・キャリーの Speedy Wunderground からリリースしたニュー・シングル。ビーバドゥービーのようなオルタナ・ギターロック・サウンドで、気だるげなボーカル/メロディーとハード目なサウンド、脱力感のあるコーラスのコントラストにちょっとUSオルタナっぽさも感じる一曲。2020年からEPをすでに3枚リリースしており、一向にアルバムを出す気配がないのだが、レーベルも変わったことでそろそろアルバムのリリースを期待したい。

Georgia – It’s Euphoric

UKのシンガーソングライター/プロデューサー、ジョージアの7月リリースのニュー・アルバムからの最初の先行曲。アルバムの共同プロデュースはロスタムが担当しており、前作の結構ハード目なエレクトロ・ポップに比べると大分まろやかな聴き心地になっており、個人的にはかなり好み。タイトルの通りユーフォリック、多幸感の中で心地よく踊れる極上のシンセポップ・チューン。最高。

Kris Ulrich – Big in the USA

Kris Ulrich – Big in the USA (Birthday Cake)

今週の1枚。

ボーイジーニアスのデビュー・アルバムはレコードが届いたらじっくりと聴こうと思ってこのアルバムをふと再生したらあまりにも素晴らしく、、。

クリス・ウルリッヒはボーイ・ゴールデン、フィールド・ガイドといったカナダのバンドへの参加やダラス・スミスやジェス・モスカルークといったカナダのカントリー・アーティストのサイドマンとして活動してきた経歴を持つカナダ/ウィニペグのギタリストだそう。コロナ禍でツアーができなくなった期間に自身の曲を書き溜めて2021年にソロデビュー・アルバム”Pacific Central”をリリースし、本作 “Big in the USA” はそれに続くソロ2ndアルバムということになる。

本作で初めて彼の音楽を聴いたのだが、オープニング・トラックの ‘Friends on the Internet’ からもう「ああこれは好きなやつだな」と確信してしまうほど好きな要素が詰まっていた。柔らかな風が吹くような春めいたメロディーとホームレコーディングによる温かみのあるギター/シンセのインディーポップ・サウンドが優しくて、スルスルと心の中に染み入ってくる。音楽性というよりは聴いたときに抱く感情として個人的に想起したのは、ジェームス・イハの”Let It Come Down”やシャムキャッツの”Girl at the Bus Stop”、あるいはくるりの”ハイウェイ”のようなアルバムや楽曲。ハートウォーミングかつ胸を抉るようなセンチメンタリズムを喚起する音楽で、出会いと別れの交差する春の日にぴったりな一枚。忘れていた感情を掘り起こしてくれるのもまた音楽の素晴らしさなのだと思わせてくれる。

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