気になった曲やトピック、「今週の1枚」などをフリーに紹介するウィークリー・レポート。(ほぼ)毎週(ほぼ)日曜日に更新予定。

今週はCharlie HickeyのMGMTカバー、Foyer Red、Bernice、pigletの新曲、HeartwormsのデビューEPについて書きました。

Charlie Hickey – Time to Pretend

ゼロ年代のインディー・アンセム MGMTの”Time to Pretend”をLAのシンガーソングライター、チャーリー・ヒッキーがアコースティックでカバーした一曲。爆発的な魅力のある原曲のアレンジを削ぎ落としエッセンスだけを抽出したようなシンプルなアレンジで、この曲が内包していた感傷的な側面を炙り出したような仕上がりで、元々このアレンジで存在していたかのような佇まいも感じられる完成度で凄く良い。フィービー・ブリジャーズのレーベルSaddest Factoryからのリリースで、プロデュース、ミックス、エンジニアリングもフィービーのバンド・メンバーでもあるマーシャル・ヴォアが担当しています。

Foyer Red – Gorgeous

NYブルックリンのアート・ロック・バンド、フォイアー・レッドの5月にリリース予定のデビュー・アルバムからの3曲目の先行曲。脱臼的なギターストロークとメロディックでフリーキーなリードギター、蛇行しながらも心地よい歩調で進んでいくリズム隊にチャーミングなボーカル。パームやママラーキーのようなバンドがさらにポップになった感じというか、練り上げられたアンサンブルが物凄くハイレベルであると同時にどこかで聴いたことがあるような親しみやすさのあるフレンドリーな佇まいが好感度高し。

Bernice – No Effort to Exist

ソングライターのロビン・ダンを中心にジャズのバックグラウンドを持つメンバーによるトロントのインディー・ポップ・バンド、バーニス の4月リリースのニュー・アルバムからの2曲目の先行曲。ニューエイジ感のあるシンセとキテレツでありながら軽やかなビート、優雅で清涼感のあるボーカル&メロディーが耳に心地よく、緻密に配置された音の重なりの美しさに思わず息を呑む上質な一曲。前衛的でありながらオシャレBGMとしても機能しそうな爽やかな耳馴染みの良さもまた素晴らしい。

piglet – Building Site Outside

2021年にポリッジ・レディオとのコラボレーション・シングルをリリースし、2022年には自身のEP “Seven Songs” をリリースしたサウスロンドンを拠点とするアイルランド人のシンガーソングライター/プロデューサー、ピグレットのニュー・シングル。感情に直接訴えるような表現の強度はポリッジ・レディオに通じるものがあり、音楽性は違えど両者のコラボレーションも必然であったと感じるエモーショナルな一曲。触ったら壊れてしまいそうなほどの繊細さと荘厳なダイナミズムのあいだを行き来しながら垣間見せる感情の揺れに心を鷲掴みにされる素晴らしい楽曲です。

Heartworms – A Comforting Notion EP

Heartworms – A Comforting Notion EP (Speedy Wunderground)

今週の1枚。

サウスロンドンのミュージシャン ジョジョ・オームのプロジェクト、ハートウォームズ のデビューEP。ダン・キャリーのプロデュースで、Speedy Wundergroundからのリリース。現代風にアップデートされたジョイ・ディヴィジョンやバウハウスのようなゴシックな雰囲気を纏ったポストパンク・サウンドは決して目新しさがあるわけではないが、ウィスパーとシャウトを使いこなす野性的かつ妖艶なボーカルスタイルが支配的で圧倒的な存在感を放っており、サウンドとの相性が抜群。端的に言って無茶苦茶かっこいい。デビューEPとしては充分過ぎるほどのインパクトを与える内容で、モノクロで統一されたアートワークやMVのビジュアルも含めカリスマ的な魅力を感じさせるニューカマーです。

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