The 20 Best Albums of 2022
20. Partner Look – By The Book
ドイツ人のAmbrinとAnilaのHasnain 姉妹とそれぞれのパートナー Dainis Lacey、Lachlan Dentonの2組のカップルによるオーストラリア/メルボルンのインディー・ポップ・バンド、Partner Lookのデビュー・アルバム。バンド名をタイトルに冠したオープニングトラック(”モンキーズのテーマ”のオマージュ?)からもう最高。軽快なジャングル・ポップから気の抜けたヴェルヴェッツ風ソング、はたまた演奏の上手なYoung Marble Giants風の曲まで、ナンセンスな歌詞と良い具合に肩の力の抜けた脱力サウンドに乗る男女ツインボーカルが底抜けにチャーミングで心温まる。飛び抜けたポップセンス、お揃いの衣装、遊び心、ゆるさと裏腹のミニマルでタイトな演奏、どれをとっても愛さずにはいられない要素の詰まった2022年のベスト・オブ・ハートウォーミング・ギターポップ。
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19. Alex Cameron – Oxy Music
オーストラリア/シドニーのシンガーソングライター、Alex Cameronの4thアルバム。このAlex Cameronという人はなかなかの曲者で、何かしらの戯画化された人物像を自ら演じるような作風があり、それはパンツ一枚で気の抜けたダンスを踊るMVを観るだけだでよくわかる。本作に対して5.0点という評価を下したPitchforkは「ゲス野郎はもう古くなり、人物描写は超越的であろうとしているが、実際には陳腐であり、決定的なのは、特に面白くもないことである」と辛辣な言葉を与えており、もっと自分が英語をダイレクトに理解できたらまた違った評価になったのかなと思ったりもしたのだが、それでも自分はこのアルバムがとても好きだ。80’s風のシンセを主体とした王道ポップスを徹頭徹尾貫いた歌が誘う郷愁の感覚がたまらなく心地よい。タイトルがRoxy MusicからRを抜いたものだと気づいた時は笑った。
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18. Soccer Mommy – Sometimes, Forever
ナッシュビルのシンガーソングライター Sophie Allisonによるプロジェクト、Soccer Mommy の3rdアルバム。Daniel Lopatin (Oneohtrix Point Nerer) がプロデュースしたと聞いて一体どんなアルバムになるんだろうと期待と不安が入り混じる気持ちでリリースを待っていたが、やっぱりSoccer Mommyはハズさない。素晴らしいアルバムだった。大胆にエレクトロニクスやグリッヂノイズを導入したりゴスっぽい雰囲気の楽曲もあったりして、OPNプロデュースのらしさを感じさせつつも、胸を抉るような切ないメロディーをグランジ的なダイナミックなサウンドで表現するSoccer Mommyの魅力も遺憾なく発揮された手堅くも挑戦的な作品で、心の琴線に触れるメロディーを書かせたら右に出る者がいないくらいSoccer Mommyのソングライティングセンスはズバ抜けているなと感じた。
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17. Yeah Yeah Yeahs – Cool It Down
NYのオルタナ・ロック・トリオ、Yeah Yeah Yeahsの9年振りの5thアルバム。Perfume Geniusが参加したM1からダイナミックかつ崇高な雰囲気も漂っていて一気に引き込まれる。アートパンクのフォーマットで初期衝動を爆発させていたデビュー・アルバム Fever to Tell から19年目、デビュー当時の魅力はそのままに、より表現力が増したKaren Oのボーカルやシンセを主体とした音作りでスケール感が増したサウンドに19年という歳月によるバンドの成熟と到達感じられて圧倒される。8曲32分というコンパクトな作品ではあるけれど、粒揃いの一曲一曲が非常に濃密で聴き応えがあり貫禄すら感じる。ロックダウン期間中に「もし二度とライブができなくなったら」と感じたことが制作動機として語られていたが、そうした影響もあってかライブパフォーマンスがありありと目に浮かんでくるような迫力とスケールの大きさを感じさせる作品。
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16. Sorry – Anywhere But Here
ロンドンのロック・バンド、Sorryの2ndアルバム。掛け声のようなコーラスが楽しいアップテンポなオープニング・トラックから突き抜けてキャッチーな魅力を感じつつも、このバンドらしい寂寞感のある映像喚起的なムードが全体に貫かれていて、どことなくウェットでブルージー。「渋い」と感じる瞬間すらある。この捻くれたポップセンスは一体どこから来ているのだろう?SSW的な作品とも感じるし、ソニック・ユースやピクシーズのような90’sオルタナの空気も感じられる。M5を筆頭にとにかく曲が良くて、勢いで誤魔化さないよく練られた演奏も素晴らしい。ムードに浸れるのがこのバンドの強みで、カタルシスを求める人には物足りなさがあるかもしれないけど、アレンジがしっかりしている分どの曲もライブで化けそうだなと感じるし、やっぱりどうしたってライブを観てみたい。
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15. Naima Bock – Giant Palm
Goat Girlの元ベーシストだったロンドンのシンガーソングライター、Naima Bockのデビュー・アルバム。ギリシャ人の母親とブラジル人の父親の間に生まれ、幼少期はサンパウロで過ごし、7歳の頃にサウスロンドンに戻って来た経歴を持つ彼女。継父の影響でアラン・ローマックスが収集した1930年代、40年代、50年代のフォークが好きだったんだそう。英国に戻ってからも定期的に通っていたというブラジルの音楽からの影響はもちろん、歌を大切にするフォーキーな感覚がこのアルバムからも随所に聞こえてくる。Naimaの優雅で滋味深い歌声がアコースティックギター、パーカッション、フルートやサックスといった管楽器、エレクトロニクスと有機的に溶け合っていく感じは時間や空間の感覚がなくなるほど没入感がある。
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14. Kiwi jr – Chopper
元AlvvaysのBrian Murphyも在籍するカナダ/トロントのインディー・ロック・バンド、Kiwi Jr. の3rdアルバム。ストロークス的な、あまりにストロークス的な…といったら言い過ぎかもしれないけど、2001年に”Is This It?” をリリース後、ストロークスにキーボーディストが加入して発表した2ndアルバムがコレでした、と言われても信じてしまいそうなくらい。とはいえ、単なるフォロワーに留まらないだけでなく本家を食ってしまいそうなくらいのキャッチーなフックが散りばめられたメロディーと色彩豊かにくすんだ黄昏と青春のガレージ・ロック・サウンドは、Alvvaysと肩を並べるくらいに人気が出てもおかしくないと思えるほどに魅力的なキラーチューンに溢れている。
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13. Peel Dream Magazine – Pad
LAを拠点とするJoseph Stevensによるドリームポップ・プロジェクト、Peel Dream Magazineの3rdアルバム。前作まではディストーション・ギターとモータリックなドラムのシューゲイズ・サウンドが特徴的だったPDMだが、今作では打って変わってフルート、ヴィブラフォン、ナイロンギター、バンジョー、オルガン、リズムボックスなどのアコースティックな楽器でドリーミーな世界観を構築。歪みは一切なし。エレクトロニクスも最小限。だけど、どうしようもなくステレオラブやハイラマズを思い出させる2022年のスペース・エイジ・バチェラー・パッド・ミュージック。懐かしい未来、見たはずのない懐かしい夢に沈み込む43分。M5の語りの部分を聞いてピチカート・ファイブの’nonstop to tokyo’における松崎しげるの機長アナウンスを思い出してしまったのも、あながち見当違いの連想ではない…はず。
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12. Luna Li – Duality
カナダ/トロントを拠点とするSSW、マルチインストゥルメンタリスト Luna Liのデビュー・アルバム。韓国にルーツを持つミュージシャンで、その繋がりからJapanese BreakfastのOAを務めた経歴もあるのだそう。本作にもJay SomやBeabadoobeeといったアジアにルーツのあるミュージシャンが参加。ドリームポップ、ガレージロック、ローファイヒップホップ、サイケデリックなど様々な影響を感じさせる音楽だけど、最も自分の琴線に触れたのがシティポップからの影響が顕著なところ。海外人気も高い間宮貴子の”Love Trip”を彷彿とさせるようなズブズブとアンニュイな夢の中に沈み込んでいくような前半の展開がたまらない。成熟感のあるボーカルやハープやストリングスを駆使した豪奢なアレンジが華を添えて展開されるベッドルーム・ポップにウットリとさせられる。ナチュラルにラップパートを忍ばせてくるドリーミーメロウなM5なんて本当に極上。
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11. Shabason & Krgovich – At Scaramouche
カナダ/バンクーバーを拠点とするシンガーソングライター Nicholas KrgovichとThe War on DrugsやDestroyerの作品への参加でも知られるトロント拠点のサクソフォニスト/マルチ奏者 Joseph Shabasonによるデュオのアルバム。Chris Harrisとのトリオ編成でリリースした2020年の”Philadelphia”の続編的なニューエイジ・アンビエント・ポップ作品で、心が洗われるようなニューエイジ・ポップのM1からクラウトロックめいたビートのミニマルファンクなM2、人肌の温もりを感じられる8ビート・ポップなM4、メロディーとリズムとサックスが複雑に絡まり合うラテンファンク調のM7など、様々なタイプの楽曲がニューエイジ的な透明感のあるシンセサウンドと温もりのあるボーカル&サックスで表現されている。最高にチルで洒落ている。
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10. Winter – What Kind of Blue Are You?
LAのミュージシャン Samira Winter によるドリームポップ/シューゲイザー・プロジェクト、Winter の5thアルバム。プロデュースはシューゲイザー・バンド Froth のフロントマン Joo-Joo AshworthでJoo-Jooの妹のSasami Ashworthも参加。Hatchieが参加したディスコティーク・ドリーミーなM2、荒涼としたムードのM3、光の差すような暖かさとトキメキを感じさせるM4、ボーカルを掻き消さんばかりのヘヴィーなシューゲイズ・チューンのM5、ファジーなギターと緩急の付け方が90’オルタナっぽいM6、サイケデリックなまどろみを感じさせるM8など、全体を通してSamiraの可憐なウィスパー・ボーカルをフィーチャーしたメランコリックなムードは一貫しつつも、歪んだギターのパレットで色付けされた陰影のグラデーションの付け方が非常に巧みで、アルバムとしての完成度の高さを感じさせる作品。「あなたはどんなブルー?」とアルバムタイトルは問いかけているけれど、いろんな種類の憂鬱に寄り添ってくれる楽曲が揃ったセラピーアルバム。
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9. Alvvays – Blue Rev
カナダ/トロントのギターポップ・バンド、Alvvaysの約5年振りの3rdアルバム。5年の間にボーカルのMollyの家に泥棒が入ってデモ音源を盗まれたり洪水で機材が壊滅したりコロナでリハが滞ったりと完成までに紆余曲折があったようだけど、それらを乗り越えて完成した作品は、一聴してそれとわかるAlvvaysの魅力はそのままに、よりスケールアップした音を聴かせてくれいて、、本当に感動的だった。先行で公開されていた冒頭2曲の”Pharmacist”と”Easy On Your Own”の時点で傑作の予感がビンビンしていたけど、甘酸っぱくてノスタルジックなメロディーとボーカルがグワンと歪んだサーフノイズギターに飲み込まれていく導入からもう泣きそうになるくらいのパンチ力があって、何度聴いてもこれぞAlvvaysと思わずガッツポーズしたくなるほど嬉しくなる。シューゲイザーに影響を受けたギターポップバンドは数あれど、Alvvaysの音の記名性の強さは特異だし、この「突き抜けた感じ」はやっぱり唯一無二だと感じる。
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8. Orlando Weeks – Hop Up
2016年に解散したUKのロック・バンド、The Maccabeesのフロントマン Orlando Weeks のソロ2ndアルバム。ブルーアイドソウルであったりニューウェーヴであったりと随所に80’sのフレーバーを感じさせる作品で、Orlando Weeksの温かみのあるボーカルとまろやかなサウンドテクスチャーも相まって、終始穏やか、かつ生き生きとした高揚感や優しさを感じさせる絶妙な歌ものアルバムに仕上がっており、この「地に足のついた崇高さ」とでも言うべきノーブルな佇まいが自分の気分にマッチして、1月にリリースされて以来年間通して本当によく聴いた。ソロデビュー作の前作が「差し迫った子育てに伴う期待や不安のカタログ」であったことに対して、本作は「より楽しく、人生を肯定する内容になった」とのことだが、一人の人間として、あるいはミュージシャンとしての円熟味が音を通して伝わってくる良作で、より多くの人に聴かれて欲しいと思える作品だ。
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7. Beach House – Once Twice Melody
ボルチモアのドリームポップ・デュオ、Beach Houseの8thアルバム。正直に言って内容については何を書いたらいいのかわからないのだけど、ただただよかった。ゴージャスでサイケデリックで天上の響きを持つ非の打ち所がないBeach Houseの音楽。4つのチャプターに分けられて2021年の12月から毎月1チャプターずつ公開されるリリース形式が取られた本作は、ある意味で4枚のEPがまとめられた作品集としても聴くことができるのだけど、決して全体として散漫な印象はなく、盤をひっくり返しながらABCD面を順番に堪能したくなる。捨て曲なしの18曲84分。2006年のアルバム・デビュー以来16年間で8枚のアルバムをリリースしてきた彼らの集大成的な作品のようにも思えるし、確固たる軸を持ちながら常に過去の作品とは似て非なるものを誠実に作り上げてきた彼らの真髄が詰まった作品で、コンスタントにハイクオリティーな作品を出し続ける姿勢にただ感服する。
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6. SOAK – If I never know you like this again
北アイルランド/デリー出身のシンガーソングライター、Bridie Monds-Watsonによるプロジェクト SOAK の3rdアルバム。18歳でリリースしたデビュー・アルバムがマーキュリープライズにノミネートされるなど、「早熟な天才」と称されるSOAK。今作はバンドとして制作することに重きを置いてバンドメンバー全員でスタジオに入って制作したのだそう。ときに不安定さや強引さを感じさせる演奏は、稚拙な印象に作用するというよりはむしろ瑞々しさや親密さを増幅させていて、胸を抉られるようなきらめきや切なさに満ちたメロディーと奇跡的なバランスで輝きを放つ。おそらく狙ってこんな作品はできないし、特別な才能を持ったアーティストがある特別な時期に偶然にしか作り得ないタイプの作品と思える。正統にして異形。要するに青春の音楽なのだ。鬱屈ときらめきが閉じ込められたメロディーとファジーなギターが爆発するM2は2022年屈指の名曲。
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5. Porridge Radio – Waterslide, Diving Board, Ladder To The Sky
UK/ブライトン出身のインディー・ロック・バンド、Porridge Radioの3rdアルバム。ラフなギターノイズから神経質な歌が立ち上がるオープニングから何度聴いてもヒリヒリとワクワクとさせられる。同じメロディーと呪詛のようにも聴こえる言葉を何度も繰り返しながら徐々に高みに昇っていくモチーフは、例えばM4の”I Don’t Wanna Be Loved”のリフレインであったり、M5の”I Don’t Wanna Go Back”のリフレインであったり、M7の”Back, and Back”のリフレインであったり、アルバムの中で何度も反復される。ぐるぐると回りながら上昇する螺旋階段のように反復は力を生み、高みに向かう。猛々しくも滋味深く優しさをを感じさせるDanaのボーカルが咆哮を繰り返す。コーラスがそれに寄り添い、呪いが祈りに反転する瞬間、光が見える。クロージングを飾る表題曲「ウォータースライド、飛び込み台、空への梯子」では「終わりは欲してない。始まりが欲しい。全ては地獄に落ちる道。全ては天国に登る道」と歌われる。
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4. Tomberlin – i don’t know who needs to hear this...
NYを拠点とするシンガーソングライター、Tomberlinの2ndアルバム。デビュー・アルバム At Weddings で聴かせてくれたTomberlinの純度の高い歌の魅力を、ギター、ペダルスティール、パーカッション、シンセサイザー、ベースなどを駆使したバンドサウンドが空間的な広がりを作り出して包み込む、緊張感がありながらどこか温かさも感じられる作品。プロデュース、ミックス、エンジニアリングを担当したPhilip Weinrobeは、エイドリアン・レンカーの”Songs and Instrumentals”のプロデュースやフローリストの2022年リリースのセルフタイトルアルバムのミックスも担当した人。本作の音作りも本当に素晴らしく、今そこで鳴っているような繊細で生々しい楽器の音の響きは、何度聴いてもゾクゾクするし新鮮な発見がある。アコースティックな音で緊張感を保って進んできたアルバムが、M8とM9のエレキギターを駆使した力強いバンドサウンドで解放される構成も心を揺さぶる。
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3. Jockstrap – I Love You Jennifer B
ギルドホール音楽演劇学校で出会ったGeorgia Ellery (Black Country, New Road) と Taylor Skyeによるロンドンを拠点とするオルタナ・ポップ・デュオ、Jockstrapのデビュー・アルバム。エレクトロノイズ、ハイパーポップ、ダブステップ、フォーク、ジャズ、オーケストラなど、様々な音楽の意匠を並列に取り入れながら、過去と未来、ポップとエクスペリメンタルの間を軽やかに往還し、高尚と低俗の境界を脱構築して奇天烈なポップミュージックとして提示するセンスに驚愕させられる。ゴージャスでエレガントで時にキャロル・キングのような70’sSSW的な滋味も感じさせるGeorgiaの歌と徹底的に音で遊んでいるようなTaylorの実験的なプロダクションが織りなす自由なハーモニーは今まで聴いたことのないような新鮮な響きがあり、まだまだポップ・ミュージックには無限の可能性が残されているんだな、と思わせてくれる。
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2. Evan J Cartwright – Bit By Bit
The Weather SteationやU.S. Girlsのドラマー/コラボレーターとしても活動するトロント拠点のドラマー/マルチ奏者、Evan J Cartwrightのデビュー・アルバム。「ポストモダンのチェット・ベイカー」と評されるトランペットのフレージングのような洒脱なボーカルとギター、シンセ、管楽器、電子音を駆使したサウンドが融け合う静謐で優雅な作品。特筆すべきは、鳥の鳴き声や喧騒、鐘の音などのフィールドレコーディングの音を随所に取り入れることで、「いまここ」で鳴っている楽器の音と「ここではないどこか」で録音され編集された具体音が混ざり合い、作品の中に多層的な時間感覚をもたらす作りになっている点である。持続音の多用や曲と曲がシームレスに繋がったり突如ブツ切りにされたりする構成は時間が伸びたり縮んだりするような異化効果を生み出す。39分という長さのアルバムではあるけれど、何度聞いても全体像を捉えることができないまま、たゆたうように豊かな時間が流れていく。
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1. Black Country, New Road – Ants From Up There
ロンドンの7人組バンド、Black Country, New Roadの2ndアルバム。デビュー作の前作も特異な作品ではあったものの、まだギター・ミュージックと呼んで違和感がないほどにはギターが前面に出たサウンドを持つアルバムだったが、本作においては、ギター、ベース、ドラム、サックス、鍵盤、ヴァイオリンの各楽器が「平等」に全体に奉仕しているかのように感じられる。各パートが持ち場や魅せ場を持ちつつ偏りが生まれないバランスの良さはまさに音による民主的なコミュニケーションのようで、互いが互いの音に耳を澄ませて反応し合い、有機的に絡み合っていく親密さや緊張感は何度聴いても感情が揺さぶられるし、起伏に富んだ長尺の曲が多いのも必然性を感じる。そして、その中心に据えられているのは、やっぱりIsac Woodの歌だと思うし、どんなにプログレッシヴな展開を持っていてもこのアルバムは歌のアルバムだと思う。彼がバンドを脱退したことは残念なことではあるけれど、それすらも必然的であると思ってしまうほどこのアルバムが到達した高みに圧倒され、感動させられた。
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