気になった曲やトピック、「今週の1枚」などをフリーに紹介するウィークリー・レポート。(ほぼ)毎週(ほぼ)日曜日に更新予定。
今週はCindy、Fenne Lily、Alicia Walter、Connie Cunningham and the Creepsの新曲、Unknown Mortal Orchestraについて書きました。
Cindy – The Price is Right
サンフランシスコのドリームポップ・バンド、シンディーの4/5リリース予定のニュー・アルバムからの2曲目の先行曲。「全ての道はバナナに通じる」というどこかで聞いた言葉を思い出してしまうようなヴェルヴェット・アンダーグラウンド風味の微睡んだサイケデリアとヤング・マーブル・ジャイアンツを思わせる削ぎ落とされた音が好みのドンピシャ。こういう音がメインストリームに躍り出ることはおそらくないだろうけど、そんなことはお構いなく、ただ自分の好きな世界を追求しているような世界観が素晴らしく、孤独に寄り添ってくれる。
Fenne Lily – In My Own Time
ブリストルのシンガーソングライター、フェン・リリーの4/14リリース予定のニュー・アルバムからの3曲目の先行曲。これまでに公開されていた2曲も素晴らしかったけど、今回の曲も本当に良い…!穏やかで滋味深く、たゆたうように流れる一曲。前のアルバムにあったような緊張感が薄れて内省感がありながらも心にじんわりと沁み入るようや温かさがあり、達観した印象さえ受ける。Twitterでも「先行曲全部良い」の声がたくさんあって今作が彼女のブレイクスルー作品になりそうな予感もあり、アルバムが非常に楽しみです。
Alicia Walter – Reach for the Sky
NYのシンガーソングライター/マルチ奏者、アリシア・ウォルターのニュー・アルバムからの2曲目の先行曲。全然ニュースになってなくて見落としていたのですが、6/23にアルバムが出るそうです。「ブロードウェイ・ミュージカル・ミーツ・アニマル・コレクティヴ」みたいな趣で衝撃を与えてくれたデビュー・アルバムに比べるとシンプルなプロダクションになったラグタイム・ポップみたいな曲で、アルバムを通してこの路線でいくのかはまだわかりませんが、問答無用で前を向かせてくれるようなパワーのある彼女の歌と演奏でやっぱり凄く良いなぁと思います。
Connie Cunningham and the Creeps – Going, Going, Going Gone
ワクサハッチーやハンド・ハビッツなどの作品への参加経歴もあるNYのミュージシャン ニック・キンゼイによるプロジェクトのデビュー・シングル。カサンドラ・ジェンキンスがコーラスで参加。1960年代前半のドゥーワップやフィル・スペクターのガールポップへの憧憬が余すことなく発揮されたヴィンテージ・ポップ。少しだけエフェクトが掛かったドラムの音のような音響処理にストレンジな味わいも感じられて凄く良い感じ。ちょっと先ですが、アルバムが9/8に出るようです。
Unknown Mortal Orchestra – V
今週の1枚。
ポートランドのミュージシャン、ルーバン・ニールソンによるサイケデリック・ポップ・バンド、アンノウン・モータル・オーケストラの5thアルバム。ショーバンドを生業とするマリオ族の父とハワイ人の母を両親に持つルーバンが自身のルーツを回想しながらカリフォルニア州パームスプリングスとハワイを行き来して構想されたという作品。ただ甘いだけでなく苦味のあるノスタルジーが充溢していてるのが凄く良い。ウエストコーストAORからポール・マッカートニー風のノスタルジックなポップス、パパ・ハオレと呼ばれるハワイアン・ポップの影響を元にした曲、プログレッシブなフュージョン・ファンクなど、多岐に渡る曲調を持つ楽曲がUMOらしいコンプレッションの掛かったザラついたサウンドテクスチャーで閉じ込められつつ、全体を通して密室感がありながら開放的という妙味の感じられる風合いに仕上げられている。太陽の光に晒された光景が褪色したフィルムで映し出されるような映像喚起的な1枚で、14曲60分のダブルアルバムという大作でありながら、何度もリピートしてこの世界に浸っていたくなる、長く付き合えそうな作品。
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