Favorite 30 Albums So far: First Half of 2021

2020年に引き続き、世界的なパンデミックに翻弄され疲弊しつつも、この状況に慣れながら、2021年も上半期が終わりました。相変わらず素晴らしい新譜を出したあのバンドやこのバンドのライヴを観ることも叶わぬまま過ごす日々に歯痒さを感じずにはいられませんが、それでもミュージシャンは音楽を作り続け、毎週金曜日には多くの新譜がリリースされています(そして素晴らしい新譜を聴く度に「ライブが観てえな」と思ってしまいます)。

サブスクリプションのサービスによって、(あくまでもそのサービスで聴くことのできる範囲内ではありますが)あらゆる新譜をリリースと同時に聴くことができる幸福な時代に生きながら、時にはそれらの膨大な新譜と対峙する時間と覚悟が足りないことに気が滅入ってしまうこともあります。しかし、素晴らしい作品に出会うたびにそうした気分は軽く吹っ飛ばされ、気になった作品をすぐに聴くことができるこの環境ってやっぱり最高だなと思い直します。と、同時に、ひとつひとつの作品とじっくり向き合うことの大切さを感じることも多くなりました。
2021年上半期も、驚きと感動を与えてくれる多くの本当に素晴らしい新譜がリリースされました。トピックとしては、UKポストパンク勢の怒涛の傑作ラッシュ、ジュリアン・ベイカー、ジャパニーズ・ブレックファースト、ルーシー・ダッカスといった女性アーティストがそれぞれブレイクスルーと言えるアルバムを出したこと、アンビエント寄りのフォーク作品に良作が多かったことなどが個人的には大きかったなと思います。

以下のリストではその中からフェイバリット作品やもっと多くの人に聴かれて欲しいなと思う作品をリリース日順で紹介しています。Apple MusicとSpotifyのリンクを載せているので、気になった作品があればぜひ聴いてみてください。どれもこれも最高の作品です。たったの一作品でも新たな音楽との出会いがあれば嬉しく思います!

(なお、6/25リリース作品は良作が多すぎて聴き込めていないので今回のリストからは除外しています)

LICE – WASTELAND: What Ails Our People Is Clear (Settled Law)

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ブリストルの実験的ポストパンク・バンド、LICE の1stフルレングスAL。20世紀初頭のイタリア未来派の画家/作曲家のルイジ・ルッソロが発明した「イントナルモーリ(調律された騒音楽器)」を手作りして本作に使用しているということからもわかるように、LICE の音楽はハイブロウな音楽的野心に支えられてもいますが、一方でパンク・ミュージック由来の衝動的な爆発力が随所に顔を覗かせており、その実験精神と衝動性がせめぎ合い調和する様が非常に刺激的。デビュー作ながら非常に完成度の高いアルバムでした。

Shame – Drunk Tank Pink (Dead Oceans)

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サウス・ロンドンの5人組ポストパンク・バンド、Shameの2ndアルバム。捻りの効いたアレンジと随所に散りばめられた強靭なフックに耳を奪われ、推進力の強いエネルギッシュな演奏に身体が火照り血が湧き踊る直球のロック・ミュージック。隆盛を極めるロンドンのポストパンク・シーンの中で一際輝く男臭さと清々しさとクールネスに満ち溢れた快作でした。ラストを飾る”Station Wagon”は、より混沌とした未来への予兆を示しているかのようで鳥肌が立ちます。

Pom Poko – Cheater (Bella Union)

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スタジオジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』からその名が取られたノルウェーのアート・パンク・バンド Pom Poko の2ndアルバム。キャッチーなメロディーとキュートなヴォーカル、せわしない展開やノイジーでパンキッシュな爆発力は、どこかUSのアヴァン・ロック・バンド、ディアフーフを思わせるところがあります。Pom Poko のメンバーは元々は大学でジャズを学んでいたようで、そうした出自も関係しているのか、破天荒ながらも高い演奏力と予測のつかないフリーキーさが非常に魅力的な作品で、一度ライブを観てみたいバンドのひとつです。

Goat Girl – On All Fours (Rough Trade)

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サウスロンドンの女性4人組バンド、Goat Girlの2ndAL。わかりやすくエッジの効いた音を出しているわけでもなく、一聴したときは地味な印象もあったのですが、何度か繰り返して聴いている内に耳にこびりついて離れなくなってしまったアルバムです。浮遊感のあるスペイシーなシンセやギターのアレンジ、様々なパターンを聴かせるリズム、コーラスワーク、曲の構成など、一曲一曲が本当によく練られていて、各曲に固有の聴きどころがあり、それでいてアルバムとしての統一感も損なわれていないのが本当に凄いなと思います。ポストパンクという枠を軽々と飛び越えた味わい深さを感じさせる作品です。

Robbie & Mona – EW (Spinny Nights)

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UKブリストル拠点の Pet Shimmersのメンバーでもある William CarkeetとEleanor Grayによるカップル・デュオ、Robbie & Mona の1stフルレングスAL。デヴィッド・リンチの『ブルー・ベルベット』やヴェラ・ヒティロヴァの『ひなぎく』、フェリーニの『甘い生活』といった映画が影響源として挙げられている本作は、グリッヂ・ノイズもチープなシンセサイザーも壊れたトランペットも全てが甘く濃密な細切れの悪夢に奉仕する、退廃的でエロティックなデカダン・ポップ。アートワークも含め確立された世界観の完璧さに惚れ惚れさせられます。

Peace Chord – Peace Chord (Unheard of Hope)

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バンクーバーを拠点とする Crack Cloud の中心メンバーであるダニエル・ロバートソンのソロ・プロジェクト、Peace Chord の1stフルレングスAL。Crack Cloud の祝祭的/ディストピア的なポストパンク・サウンドとは異なり、本作は最小限のピアノ、シンセサイザー、ギター、ヴォーカルで構成された瞑想的なアンビエント作品。非情で荒廃した現実の中にあるアジールのように、精神の奥底に沈み込みどこか安堵した気分になれる静謐な音楽です。同時期に制作された Crack Cloud の Pain Olympia と対にして聴きたいアルバムですね。

Black Country, New Road – For the First Time (Nija Tune)

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2021年上半期最大の話題作といっても過言ではないロンドンの7人組、Black Country, New Roadの1stフルレングスAL。アルバムリリース前から The Quietusに「世界最高のロックバンド」と称され注目が大きくなりすぎた感はあるものの、そんなことはどこ吹く風というように、BC,NRは飄々と最高のデビュー・アルバムを届けてくれました。ノイジーで獰猛な音を鳴らしていながらも野蛮さというよりはインテリジェンスを感じさせる仕上がりで、各楽器が反復と即興を自在に往還しながらダイナミックに展開する楽曲群は非常に聴き応えがあり、今後がより楽しみになる完璧なデビューアルバムですね。

Sarah Mary Chadwick – Me & Ennui Are Friends, Baby (Ba Da Bing!)

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ニュージーランド出身メルボルン在住のシンガーソングライター、Sarah Mary Chadwick の7thアルバム。レコーディングの数週間前に長年のパートナーとの破局を迎え自殺を企図したという出来事を通過して制作された本作は、全編に渡ってピアノとヴォーカルだけで精神の奥底に沈み込みそこから這い上がってくるような強度を感じさせる表現が貫かれており、その迫力はあのニーナ・シモンすら思わせる深みがあります。痛みを対象化し昇華する過程から生まれた歌には真の癒しと許しがある、そんなことを感じさせてくれる作品です。

Katy Kirby – Cool Dry Place (Keeled Scales)

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今最も良質なインディー・フォーク / ロックを届けてくれると言って差し支えないであろう Keeled Scales からリリースされたテキサス出身ナッシュヴィル拠点のシンガーソングライター、Katy Kirby の1stフルレングスAL。耳馴染みのよいメロディーとヴォーカルに細部まで配慮が行き届いた表現力豊かなバンド・アレンジが爽やかで心地よく、サボテンの生えた草むらで色の抜けたジーンズに白のタンクトップで居心地悪そうに佇むアートワークの写真のように、飾り気はなくとも丁寧に生活や心の機微が掬い上げる繊細さが感じられる良作。何気ないときに聴きたくなるような日常に寄り添ってくれるアルバムです。

Cassandra Jenkins – An Overview on Phenomenal Nature (Ba Da Bing!)

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NYのシンガーソングライター、Cassandra Jenkinsの2ndAL。本作の制作背景にシルヴァー・ジューズのデヴィッド・バーマンの自死が関係していることは、TURNの素晴らしい記事 に詳細に書かれているのでぜひ参照してもらいたい。Cassandra Jenkinsの歌声や各楽器の響きを生々しく伝えつつも空間的な広がりを感じさせるサウンド・プロダクションが非常に素晴らしく、それらとフィールド・レコーディングの音声がオーバーラップするように重ねられることで、多層的な時間軸を感じさせるアンビエント・フォーク作品。悲しみがベースにありつつもその上で生きることを尊ぶような前向きさも感じることのできるムードが深く静かな感動を引き起こす、これから先もずっと聴き続けるだろうと確信を持って思える傑作です。

Julian Baker – Little Oblivions (Matador)

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テネシー州メンフィス出身のシンガーソングライター、Julien Bakerの3rdAL。1曲目の”Hardline”からどこか自らを開放したかのようなベイカーのエモーショナルな歌に心が鷲掴みにされます。ほぼ全ての楽器を自ら演奏したという本作、弾き語り主体だったデビュー作で聴かせたあの繊細さを決して損なわず、ダイナミックな躍動感が与えられており、ジュリアン・ベイカー特有の内に沈み込んだ感情を絞り出して外の世界に晒すときの震えが感じ取れるような楽曲が揃った本当に感動的な作品です。今最もライブを観てみたいアーティストのひとりです。

Karima Walker – Waking the Dreaming Body (Keeled Scales)

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Keeled Scales からリリースされたアリゾナ州ツーソンのシンガソングライター、 Karima Walker の2ndアルバム。これも本当に素晴らしい作品でした。「呼吸や他のリズムに合わせて、体と自然界を繋ぐようなアレンジを目指していました」とKarima自身が語るように、独特なタイム感と豊かなテクスチャーを持つこのアルバムを聴いていると、壮大な自然の中に身を置いて、意識と無意識のあいだを行き来しながら心と体が解きほぐされていくような感覚になります。夢うつつとはまさにこのこと…。時間的、空間的な認識が揺さぶられる稀有な体験をもたらす、ドリーミー・アンビエント・フォークの傑作です。

IAN SWEET – Show Me How You Disappear (Polyvinyl)

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ブルックリンを拠点とする Julian Medfordによるオルタナ・ポップ・プロジェクト、IAN SWEETの3rdAL。ベッドルーム・ポップと言うには肉感がありすぎるし、かといって完全に生音のバンド・サウンドでもなく、そのあたりの折衷感が懐かしくもあり、新しさも感じさせます。リバーヴの効いたシンセやギターが空間的な広がりを感じさせたかと思えば、水の中でモゴモゴとエモーショナルなボーカルが踠いているようにも感じられたり…。開放感と密室性を同時に感じさせるような不思議な音像とポップさを持ったアルバムです。

Painted Shrines – Heaven and Holy (Woodsist)

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Woodsの創設メンバーである Jeremy Earlと、Glenn Donaldson (Skygreen Leopards、The Reds, Pinks & Purples) によるデュオ、Painted Shrinesの1stフルレングスAL。The PapercutsのJeff Mollerがベースで参加。ザ・バーズを彷彿とさせる牧歌的でほんのりサイケデリックなフォーキー・ポップ・アルバムで、哀愁を感じさせる裏声で歌われる泣きメロに温かな音色のファズギターがアクセントとなり、思わず胸を掻きむしられるような名曲ぞろいの一作。中でも枯れ果てた”Friday I’m in Love”な趣を感じさせる”Gone”が至高…。

Alice Phoebe Lou – Glow (Self-Released)

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南アフリカ出身でベルリンを拠点とする女性シンガーソングライター、Alice Phoebe Lou の3rdAL。ギター、キーボード、ベース、ドラムのシンプルなバンド編成でスローな楽曲が統一感のある幽玄なムードでまとめ上げられた一作。ジャズ・ヴォーカルものを思わせる少しのいかがわしさと気品を兼ね備えた神秘的でぼんやりとしたムードは、2019年の前作でも感じ取ることのできた要素ではあるけれど、今作は迷いを感じさせない成熟したバンド・アンサンブルとアナログな質感のサウンド・テクスチャーの完成度が非常に高く、存分にその世界観に浸ることのできるアルバムでした。夜中に薄暗い部屋でしっとり聴き入りたいアルバムですね。

For Those I Love – For Those I Love (September Recordings)

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ダブリンのプロデューサー/シンガーソングライターの David Balfeによるソロプロジェクト、For Those I Love のデビューAL。デヴィッドの親友でありバンドメイトであったポール・カランの氏を契機としてレコーディングされた76曲に及ぶ楽曲の中から最終的に9トラックに絞られアルバムとして完成されたという本作、テーマは「悲しみとカタルシス」。高揚感のあるエレクトロニックのトラックとスポークン・ワードの応酬によって有無を言わせぬ迫力で表現されるそれぞれの楽曲は、アルバムに込められた想いや背景をリスナーにダイレクトに伝える強度があります。喪失の痛みと愛が結晶化した切実なレクイエムが胸を打たずにはいられない本当に美しい作品。

The Antlers Green to Gold

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ブルックリンのインディー・ロック・バンド、 The Antlers の6thアルバム。ヴォーカリスト Peter Silverman の聴覚障害と声帯の病気といった困難な状況を経て制作されたという背景が反映されて、苦しみを乗り越えた後に鳴らされる彼岸のように柔らかく穏やかな楽曲が並んだチェンバー・ポップ・アルバムとなっています。シルヴァーマンはこのアルバムについて、「日曜日の朝の音楽を作ろうと思った」と語っていますが、まさしくその言葉が体現された心温まる穏やかな陽光のようなアルバムで、聴いていて心が洗われます。

Lost Girls – Menneskekollektivet (Smalltown Supersound)

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ノルウェー・オスロのプロデューサー/シンガーの Jenny Hvalとマルチインストゥルメンタリストの Håvard Voldenによるプロジェクト、Lost Girls の1stフルレングスAL。歌と語りのあいだを自由に往還するヴォーカルにアブストラクトなシンセサイザー、即興的なギターが織りなす神秘的でアーティスティックな音響空間が陶酔感をもたらす刺激的な一枚。フロアライクなビートが強調された楽曲も多く、こうした音楽こそ今クラブで爆音で聴きたいなと思います。

Raf Rundell – O.M. Days (Heavenly)

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ホット・チップのジョン・ゴッダードとのユニット The 2 Bearsでの活動で知られるロンドン拠点のプロデューサー/DJの Raf Rundellの2ndAL。クラフトワークや YMO、ZEレコーズからステレオラブまで、様々な音楽を想起させるトロピカルでバレアリックなディスコ/ファンクサウンドが心地よい本作、どこかオールドスクールな香りがする音楽だと思ったら、イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのチャズ・ジャンケルが参加しており、全体に漂うニューウェーヴ・ファンク風味はこれだったかと納得。ヒゲにボウズの垢抜けないおっさんが40代後半でリリースする2ndアルバムという事実に相応しい大人の余裕と深堀のセンスを感じさせる一枚。

Glüme – The Internet (Italians Do It Better)

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LAを拠点とするミュージシャン、Glümeの1stフルレングスAL。プロデュースは Italians Do It Betterの代表であり、クロマティックスを主宰するジョニー・ジュエル。クロマティックスを彷彿とさせるダークなイタロ・ディスコにコケティッシュな歌が乗るグラマラスな世界観はどこか箱庭的な隔世感があり、時空の違うディスコに迷い込んだかのようなデヴィッド・リンチ的な奇妙な感覚があり、癖になります。プリンツメタル狭心症という心臓病を持病として持つ彼女がマリリン・モンローやジンジャー・ロジャースに憧れ、自由の効かない体でダンスをするMVを見てしまうと、このアウトサイダー的な感性を持つ音楽を空虚だとかキッチュだと言うことは決してできない。もっと多くの人に聴かれて欲しいアルバムのひとつです。

Mia Joy – Spirit Tamer (Fire Talk)

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シカゴを拠点とするシンガーソングライター/マルチインストゥルメンタリストの Mia Rochaによるプロジェクト、Mia Joyの1stフルレングスAL。ドリームポップというよりはもっと抽象度の高いスピリチュアルなムードを感じさせる音楽で、ゆったりとした曲調と淡いギターの音色、微睡みを感じさせる歌声が生み出す幻想的な世界観が魅力的な一枚。GrouperとSadeに影響を受けたという本作ですが、ループさせた声を伴奏にしつつリズムボックスを使用したスピリチュアル・アンビエント・R&Bとでも言えそうな”Saturn”などは、あまり結びつきそうにない両者の要素を同時に感じ取ることができる楽曲でおもしろいです。

Iceage – Seek Shelter (Mexican Summer)

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コペンハーゲンのロック・バンド、Iceageの5thAL。プロデュースは Spacemen3の Sonicboom。3rdALくらいから徐々にメロディックな要素が増してきた Iceageですが、今作では思い切りそっち方面に舵を振り切った結果、かつてないほどにキャッチーで射程の広いアルバムとなっています。プライマル・スクリームを想起させるマンチェビートな”Vendra”や聖歌隊のコーラスを取り入れた”Shelter Song”に”Love Kills Slowly”、もの哀しいギターとピアノが印象的なバカラック調の”Drinkin Rain”、オアシス (!) を想起させるほどにキャッチーな”Dear Saint Cecilia”など、全9曲すべてシングルカット可能な楽曲がそろった文句無しの最高傑作。

John Andrews & The Yawns – Cookbook (Woodsist)

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Quilt や Woods のメンバーでもあるニューハンプシャー州を拠点とするミュージシャン、John Andrews による架空のバンド、John Andrews & the Yawns の3rdAL。70’sのSSWモノを思わせるノスタルジックなメロディーを持つ楽曲が、60’s後半から70’s前半のソフトロックを思わせるほんのりとサイケで優雅なアレンジで味付けされ、さらにリバーブの掛かった甘いボーカルがドリーミーな質感を一段と引き上げる。思わずこのアルバムが録音された場所へと思いを馳せてしまうような温かさがあります。親しみやすくも夢のような聴き心地にトバされる極上の一枚。

Sons of Raphael – Full-Throated Messianic Homage (Because Music)

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ロンドンの兄弟デュオ、Sons of Raphaelの1stフルレングスAL。ミックスは2019年に事故で逝去したフィリップ・ズダールが担当(アルバムは7年の歳月をかけて制作されていたようです)。MGMTをもっとファンタジックにしたかのような印象のサイケデリックなサイファイ・オーケストラル・ポップなアルバムで、狂気的とも言えるこのポップ・センス、そして兄弟デュオと来れば、スパークスのメイル兄弟やザ・レモン・ツイッグスのダダリオ兄弟といった知性とウィットを持ったロックを奏でる兄弟デュオの系譜を感じずにはいられません。両バンドのファンにもおすすめしたい中毒性の高いポップネスを持つ一枚です。

Charles – Let’s Start A Family Tonight (Babe City)

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LA拠点のマルチインストゥルメンタリストで、Wyes Bloodの”Seven Words”のMVの監督なんかもしているマルチメディア・アーティスト Charlotte Ercoli Coeによるソロプロジェクト、Charles の2ndAL。アルバムタイトルやアートワークの通りロマンティックな音楽かと思いきや、これが非常に毒気が強い。イタリアの70’sのプログレバンド、センセーションズ・フィックスや80’sのトリッピーなサイケ・グループから影響を受けたという本作、そのままにしておけば80’sディスコをチルウェーヴ風にアレンジしたドリーミーなベッドルーム・ポップとして聴けそうな心地よい楽曲群を、ピッチを弄ったりエフェクトを掛けたりしてズタズタに歪め、ドラッギーな酩酊感のある作品に仕上げています。非常に中毒性が高く、2021年上半期の裏ベスト的な一枚です。

UV-TV – Always Something (PaperCup Music)

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USの3人組インディー・パンク・バンド、UV-TV の3rdアルバム。フロリダからNYに拠点を移し、新たなドラマーを迎え入れて制作された本作は、フィメール・ヴォーカルのギターポップ・ファンの琴線を刺激しまくる要素が満載の一作。徹頭徹尾キャッチーなメロディーと軽快に疾走するジャングリーなインディー・パンク・サウンドは、かのヴェロニカ・フォールズを思い出しますね(ゴシックな要素は皆無ですが…)。ひとまずパパパパコーラスのキラー・チューン”Distant Lullaby”を聴いてみてください。問答無用でノックアウトされます。

Japanese Breakfast – Jubilee (Dead Oceans)

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オレゴン州ユージーン出身の韓国系アメリカ人、ミシェル・ザウナーによるプロジェクト、Japanese Breakfast の3rdAL。2021年の上半期を振り返るにあたって、Japanese Breakfastのこのアルバムも外すことのできない感動的な作品でした。2016年の Psychopomp、2017年の Soft Sounds from Another Planetと、彼女の音楽はポジティヴなバイブスを感じさせる楽曲が多くある一方で、どこか苦悩と向き合いながら必死で前を向いているような痛々しさを感じさせるところもあるものでしたが、本作からは何か山を乗り越えたかのような、タイトルの通り祝祭的なムードが全編に渡って漲っています。ホーンとマーチング・ドラムワクワクするようなムードを盛り立てるオープニング・トラックからエモーショナルな轟音のギターに満たされるラスト・トラックまで、ザウナーの過去・現在・未来を捉える視線はかつてないほどに穏やかで力強く、表現のスケールが大きくなっていることが伝わってきます。

EXEK – Good Thing They Ripped Up The Carpet (Lulus Sonic Disc Club)

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メルボルンを拠点とする EXEKの4thAL。A面は2020年に録音された楽曲、B面は他のアーティストのリリース作品や7インチシングル、コンピレーションに収録された楽曲の再録やリミックスで構成された作品。EXEKの音楽はポストパンクと括られてはいるようですが、UKのポストパンク勢とは若干毛色の異なる音楽で、クラウトロック由来のモータリックなビートやPILを想起させるダビーなビートにコズミックでトリッピー、そしてロマンスの要素を感じさせる不気味なテクスチャーの音像をパンクのフォーマットに落とし込む刺激的なアルバムとなっています。これもまたポストパンクのひとつの形だとそっと提示する、2021年上半期のダークホース的な一枚。

Hildegard – Hildegard (section1)

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モントリオールを拠点とする実験的なシンガーソングライターの Helena Deland と、マルチ インストゥルメンタリスト/プロデューサーのOuri (Ourielle Auvé) による新プロジェクト、Hildegard の1stフルレングスAL。Ouriの完璧にデザインされたエレクトロサウンドとHelenaの瞑想的なボーカルが見事に融合し、中世ドイツの女性神秘家/作曲家/預言者=ヒルデガルドの亡霊を呼び寄せるかのようなスピリチュアルな世界観にどっぷりと浸ることのできるアルバム。たった8日間で制作されたとは思えぬほどの完成度に二人の創造性の相性の良さが感じられます。

White Flowers – Day By Day (Tough Love)

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UK北部のプレストンを拠点とする2人組、White Flowers の1stフルレングスAL。ダークで浮遊感のあるシューゲイズ・サウンドは、一聴してコクトー・ツインズやビーチ・ハウスのような耽美的なモノクロームのドリームポップを思い浮かべますが、White Flowersの音楽はより無機質で寒々とした工業的なイメージを喚起させます。そこは本人たちも語っているようにプレストンという土地がもたらす風景や孤立感によるものが大きいのだろうと思います。都市からの距離的、文化的な断絶感が見事に表現された孤高の佇まいを感じさせるアルバムです。